このページの要点
- 運営者は虚偽・誤解を生じさせる表示をしてはならず、情報を正確・最新に保つ措置を講じる(職業安定法5条の4、施行規則4条の3第4項)。
- 掲載企業規約で、掲載企業の正確性の責任・募集終了の通知義務・掲載日の表示・訂正と掲載停止をつなぐ。
- 掲載できる求人の基準を三段階で規約に書き、代理入力の最終確認は掲載企業に置く。
- 求職者は消費者。利用者規約の免責は、軽過失に限ることを明らかにして書く(消費者契約法8条)。
求人サイトの運営者にも「表示の義務」がある
求人サイト(企業の依頼を受けて求人情報を掲載する、職業安定法4条6項1号の募集情報等提供)の運営者は、許可も届出も要らない事業であっても、職業安定法上の義務を負っています。規約に「掲載内容について当社は一切責任を負いません」と書くだけでは足りない、というのが出発点です。
求人サイトの運営者と掲載企業が負う主な義務
| 義務 | 運営者(募集情報等提供事業を行う者) | 掲載企業(労働者の募集を行う者) |
|---|---|---|
| 虚偽・誤解を生じさせる表示の禁止 | 負う(5条の4第1項) | 負う(5条の4第1項) |
| 正確・最新に保つこと | そのための措置を講じる(5条の4第3項、施行規則4条の3第4項) | 自らの募集情報を正確・最新に保つ(5条の4第2項) |
| 苦情の処理 | 適切かつ迅速に処理し、体制を整備する(43条の7) | ― |
| 情報の提供(努力義務) | 的確な表示・苦情の処理などに関する情報の提供に努める(43条の6、施行規則31条の4) | ― |
虚偽の広告をし、又は虚偽の条件を提示して募集情報等提供を行った者は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象です(65条9号)。
運営者が講じなければならない「正確かつ最新の内容に保つための措置」は、施行規則4条の3第4項に具体的に定められています。情報の提供を依頼した者などから提供の中止や訂正を求められたら遅滞なく中止・訂正すること、情報が正確でない又は最新でないことを確認したら遅滞なく依頼者に訂正の有無を確認するか提供を中止すること、そして企業の依頼で掲載する型では、募集が終わったり内容が変わったりしたら速やかに通知するよう依頼するか、情報の時点を明らかにすること、です。
情報の提供の努力義務の対象には、求職者の個人情報を適正に管理するために講じている措置と、情報に順位を付けて表示する場合の順位の決め方の主要な事項(広告費などの支払が順位に影響する可能性がある場合はその旨を含みます)が含まれます(施行規則31条の4第2項)。有料プランの企業を上位に表示する求人サイトは、その旨をインターネットで情報提供するよう努めることになります。
掲載企業規約で、運営者の措置と掲載企業の義務を一本につなぐ
この法令の構造を踏まえると、掲載企業規約には、①掲載内容の責任は掲載企業にあること、②運営者が訂正・掲載停止を求められること、③募集の終了・条件の変更を通知する義務、④情報の時点(掲載日・更新日)の表示、を定めるのが基本になります。そうすると、運営者が法令上講じるべき措置と、掲載企業が負う義務が、規約の上で一本につながります。
条文例求人情報掲載規約 第◯条(掲載情報の正確性)
- 掲載企業は、掲載を申し込む求人情報について、業務の内容、賃金、労働時間、就業の場所その他の労働条件を正確に記載し、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはなりません。
- 掲載企業は、募集を終了したとき、又は求人情報の内容に変更が生じたときは、速やかに当社に通知し、掲載の終了又は内容の変更の手続をとるものとします。
- 当社は、掲載情報に掲載日及び最終の更新日を表示します。
- 当社は、掲載情報が正確でない、又は最新でないおそれがあることを知ったときは、掲載企業に訂正の有無を確認し、確認がとれるまでの間、掲載を中止することができます。
- 当社は、掲載企業から掲載の中止又は内容の訂正を求められたときは、遅滞なく対応します。
職業安定法5条の4と施行規則4条の3第4項の措置を、規約の条文に置き換えた例です。
掲載できる求人の基準を、規約に書いておく
地域の求人情報掲載サイトの掲載企業規約では、掲載できない業種を三段階に分けました。
掲載可否の三段階(地域求人サイトの規約)
一律に掲載しない
- 労働者派遣事業を主業とする企業の求人
- 性風俗関連特殊営業の求人
- 暴力団関係の事業・マルチ商法・宗教の勧誘など
条件付きで掲載する
- 遊技場・公営競技の関連など
- 法令の遵守を条件に
- 運営者が適当と認めた場合に限る
個別の判断で断ることがある
- 公序良俗・社会通念に照らして
- 利用者の保護の観点から
- 運営者が個別に判断する
あわせて、地域内に実際の就業場所があることを掲載条件にし、完全在宅のみの求人は断ることがある、としました。
同じ規約では、職業安定法・労働基準法・男女雇用機会均等法などに違反する求人や、差別的な条件を含む求人は掲載しないことも定めています。「どの求人を載せるか」は運営者の判断ですが、基準を規約に書いておくと、掲載を断ったときの説明と、不適切な情報の掲載中止(法令上の措置)の両方の根拠になります。
この規約では、掲載企業規約に「当社は、労働者の職業紹介、職業あっせん、労働条件の調整、雇用契約の締結の仲介を行うものではなく、有料職業紹介事業・無料職業紹介事業・労働者派遣事業を行うものではない」と書き、利用者向けの規約にも同じ趣旨、プライバシーポリシーには「求職者から直接、履歴書や応募情報を取得・管理することはない」と書いて、情報提供型であることを三つの書類で一致させました(事業の型と許可・届出の要否)。
代理入力・原稿の修正・アカウント運用の代行
設計の要点 代理入力の免責(地域求人サイト)
| 論点 | 設計 | 理由 |
|---|---|---|
| 代理入力 | 「代理入力の免責」の条を置く。パソコン等の操作環境がない・操作が難しい掲載企業について、依頼・承諾を受けて運営者が求人情報を代わりに入力する運用を前提に、最終確認の義務は掲載企業にあること、入力後の内容を速やかに確認し誤りがあれば訂正を申し出ること、申出がなければ内容に同意したものとみなすこと、運営者は故意・重過失がない限り責任を負わないこと、を定める。 | 運営者が求人情報を代わりに入力するという運営上の事実を、規約に反映するためです。 |
代理入力をすると、運営者自身が表示内容の作成に関与するので、運営者がもともと負っている虚偽・誤解を生じさせる表示の禁止(5条の4第1項)が、運営者自身の入力の誤りとして直接問われる場面になります。免責の条とは別に、入力した原稿を掲載企業がいつ確認したかの記録を残す運用が大切になります。
求人媒体の掲載契約では、掲載中の原稿の修正を、支店名・所在地・給与額・福利厚生の追加・勤務時間の微調整など構成や主旨に影響しない「簡易修正」(無料・回数無制限)と、職種の変更・募集条件の抜本的な変更など実質的に新規原稿に近い「大幅修正」(契約期間中に一定回数まで無料、超えたら1回ごとに定額)に分けていました。給与額や勤務時間の変更を無料・無制限にしておくのは、掲載企業が募集情報を正確・最新に保つ義務を果たしやすくする設計としても説明できます。
同じ契約には、求人企業が無料の求人媒体のアカウント運用を運営者に委託できる条もありました。求人企業はログイン情報を提供し、運用期間中は管理者用の連絡先メールアドレスを運営者の指定のものに変更することに同意する、運営者はログイン情報を厳重に管理し、契約終了又は依頼があれば解約の通知を受けた日から7日以内にログイン情報を返還して管理者用アドレスを元に戻す、という定めです。アカウントの帰属の紛争を防ぐには、返還の期限を日数で決めておくことが要点です(採用代行・採用マーケティングの契約書)。
通報・非表示・異議申立てと、規約の改定履歴
地域求人サイトの掲載企業規約では、掲載情報について利用者その他の第三者から通報・クレームがあった場合、運営者は掲載情報の全部又は一部を予告なく非表示・削除でき、掲載企業に損害が生じても責任を負わない、としました。アカウントの停止・削除は運営者の裁量ですが、掲載企業は不服を申し立てることができ、運営者は申立てを考慮して最終的に判断します(結果の説明義務は負いません)。利用者向けの規約にも同じ異議申立ての項を置いています。苦情の処理と体制の整備(43条の7)を、規約の上では「通報→非表示」「掲載企業の異議申立て」という双方向の手続として形にした例です。
同じ規約には「規約の改定履歴及び旧規約の保管」の条も置きました。改定のたびに改定日と改定内容の概要を記録して改定日から5年間を目安に保存する、掲載企業が合理的な理由で旧規約の開示を求めたら運営者が相当と認める範囲で開示する(営業秘密・セキュリティ・第三者の権利を理由に拒否できる)、重要な変更(料金体系の新設・変更、掲載条件の追加・強化など)は効力発生日の30日前までに電子メール・管理画面で通知するよう努める、という内容です。無料で始めて後から有料化する求人サイトでは、「どの時点の規約に同意したか」が料金トラブルの争点になるので、旧規約の保存はその証拠の確保になります。
運営者が求人サイトとは別の事業を営んでいて、掲載企業にその利用を勧めることがある、という事情を前提に、「その利用はあくまで任意であり、掲載条件と利用料金に影響しない」と明記した例もあります。掲載の可否や表示の順位と別の商品の購入を結びつけていないことを書いておくと、表示の順位の決め方の説明(施行規則31条の4第2項2号)とも整合させやすくなります。
成果報酬型の求人サイトと、利用者(求職者)向け規約
学生インターン求人の成果報酬型のサービスでは、学生は無料、企業は採用の成果に応じた定額の成果報酬で、成果報酬の発生を「選考合格の通知及び雇用契約等の契約が成立した時点」とし、別の契約では「内定通知書・雇用契約書・準委任契約書等の交付」又は「業務開始(出社・ログイン・初回業務)」のいずれかの時点としていました。成果報酬型の求人サイトでも、運営者が学生を個別に選んで推薦しないことが、職業紹介との区別の前提になります。
利用者向けの規約では、求職者が消費者であることを前提にします。求人マッチングの規約では、運営者の賠償責任を「直近1か月の利用料総額」を上限とし、相当期間ログインがない登録情報を通知なく削除できる、未成年者の登録には法定代理人の同意を前提とし確認書類の提出を求めることができる、としていました。地域求人サイトの利用者向け規約では、免責・責任制限の条に「消費者契約法その他の強行法規により制限される範囲では適用しない」と明記しています。消費者契約法は、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項や、故意・重大な過失による責任の一部を免除する条項を無効とし(8条1項)、軽過失の場合に限って責任の一部を免除する条項も、軽過失にのみ適用されることを明らかにしていなければ無効としています(同条3項)。無料のサービスでも、責任制限の書き方はこの観点で調整が必要です。
条文例利用者規約 第◯条(当社の責任)
- 当社は、掲載企業と利用者との間の応募、選考、雇用契約その他の取引について、当事者とはならず、その成否について責任を負いません。ただし、当社の故意又は過失により利用者に損害が生じた場合は、この限りではありません。
- 当社の債務不履行又は不法行為により利用者に損害が生じた場合、当社は、当社に故意又は重大な過失があるときを除き、利用者に現実に生じた通常の損害に限り賠償の責任を負います。
- 前項の規定は、当社の故意又は重大な過失による場合には適用しません。
- 本規約の免責又は責任の制限に関する定めは、消費者契約法その他の強行法規により無効とされる範囲では適用しません。
求職者が消費者であることを前提にした例です。第2項・第3項で、軽過失の場合に限る制限であることを条文上明らかにしています。
高校生・大学生が使う求人サイトでは、未成年者の扱いも規約で決めておきます。求人マッチングの規約では、未成年者の登録には法定代理人の同意を前提とし、同意を確認する書類の提出を求めることができる、としていました。新卒スカウトのサービスのように、厳格な確認を求めると利用の実態に合わない場合は、「保護者又は法定代理人の同意を得てから利用してください」という呼びかけにとどめる設計もあります(スカウト・送客サービスの規約)。どちらを選ぶかは、サービスの利用者の年齢層と、有料の機能があるかどうかで決めます。未成年者が法定代理人の同意を得ないでした契約は取り消すことができるので、有料の機能がある場合は確認の手順まで決めておくほうが安全です。
苦情の処理の体制(43条の7)は、規約の上では窓口の定めとして表れます。求職者・掲載企業・紹介事業者などからの苦情を受け付ける窓口(問合せフォームやメールアドレス)と、受け付けた苦情を掲載企業に照会し、必要に応じて掲載を中止する手続を、利用者規約と掲載企業規約の両方に書いておきます。窓口が掲載企業規約にしかない、又は問合せ先が書かれているだけで苦情の扱いが分からない、という規約は少なくありません。苦情を受けて掲載を中止した場合に、掲載企業へ何を通知し、掲載企業がどのように異議を申し立てられるかまで書いておくと、上で述べた通報・非表示・異議申立ての手続と一体で運用できます。
同じ求人マッチングの規約では、ユーザー(求職者を含みます)が投稿・提出したコンテンツを、運営者が広告・広報などの目的で無償・非独占的に利用できるとする許諾も置かれていました。求人マッチングでは、求職者のプロフィールや応募書類もユーザーコンテンツに含まれ得ます。これを広告・広報に使う許諾は、求職者の個人情報を目的を明らかにして収集し、その範囲で使用する義務(5条の5)との関係で、求職者の情報を対象から外すか、利用目的を限定して書くべき箇所です(求職者の個人情報とプライバシーポリシー)。
実績の表示と、業務委託の募集の掲載
職業紹介事業者や募集情報等提供事業を行う者が広告などで提供する情報には、求人・求職者の情報だけでなく「法に基づく業務の実績に関する情報」も含まれ、虚偽又は誤解を生じさせる表示が禁止されます(5条の4第1項、施行規則4条の3第2項2号)。求人サイトの「掲載数No.1」「採用決定率◯%」、紹介会社の「内定率」「年収アップ率」といった表示は、算定の根拠を説明できる形で出す必要があります。事務所の資料でも、キャリアスクールの提案書で、根拠を示せない成功率のような実績表示をリスクとして挙げ、新卒スカウトのSaaSでは企業に「虚偽の内容、誇大広告、誤認を与える情報の掲載」を禁止していました。
業務委託(フリーランス)の募集を掲載する場合は、別の法律もかかります。特定業務委託事業者は、広告などで特定受託事業者の募集に関する情報を提供するときは、虚偽又は誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません(フリーランス法12条)。掲載企業規約に、雇用の求人と業務委託の募集を区別して表示する義務を置いておくと、求職者の誤解を防げます。
ご質問と回答 求人サイトの運営者からのご質問
無料で始めた求人サイトを、来年から有料にしたいと考えています。規約で何を準備すればよいですか。
料金の条を新設する変更は重要な変更として、効力発生日より前に掲載企業へ通知する手続を規約に置いておきます。どの時点の規約に同意したかが争いになるので、改定の履歴と旧規約を保存しておくことも大切です。
掲載を断った企業から、理由の説明を求められました。
掲載の可否の基準を規約に書いておけば、その基準に当たることを示して説明できます。個別の判断で断る場合の定めも置いたうえで、説明の範囲(詳細な理由までは開示しない等)を決めておくと、対応がぶれません。
ヒヤリングで確かめること 求人サイトの規約を作る前の問い
運営者が求人原稿を作ったり、代わりに入力したりしますか。
代理入力の条と、掲載企業の確認の記録の残し方を決めます。
有料プランの企業を上位に表示しますか。
順位の決め方と広告費の影響の情報提供(努力義務)を検討します。
掲載を断る業種・求人はありますか。
三段階の基準として規約に書きます。
求職者が登録して、プロフィールを企業に見せる機能はありますか。
あれば特定募集情報等提供になり得ます(スカウト・送客サービス)。
業務委託の募集も載せますか。
雇用の求人と区別して表示する義務を置きます。
求人サイトの規約で起きがちなこと
よくあるご質問
求人サイトの運営者は、掲載された求人の内容に責任を負いますか?
掲載企業が作った求人でも、運営者には虚偽・誤解を生じさせる表示をしない義務と、情報を正確・最新に保つための措置を講じる義務があります(職業安定法5条の4)。規約で掲載企業の責任を定めるだけでなく、訂正・掲載停止の手続を整えておきます。
求人原稿を運営者が代わりに作ったり入力したりしてもよいですか?
可能ですが、運営者自身も表示内容に関与することになるため、掲載前に掲載企業の確認を受けた記録を残す運用が大切です。規約には、最終確認の責任が掲載企業にあることを定めます。
有料プランの企業を上位に表示してもよいですか?
禁止されてはいませんが、表示の順位を決める主要な事項と、広告費が順位に影響する場合はその旨を、インターネット等で情報提供するよう努める必要があります(職業安定法43条の6、施行規則31条の4)。
業務委託(フリーランス)の募集も掲載したいのですが、注意点はありますか?
特定業務委託事業者は、募集情報を正確・最新に保ち、虚偽・誤解を生じさせる表示をしてはなりません(フリーランス法12条)。掲載企業規約に、雇用の求人と業務委託の募集を区別して表示する義務を置くとよいです。
求職者向けの規約で、運営者の責任を全部免除してもよいですか?
求職者は消費者なので、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項は消費者契約法8条1項により無効です。軽過失の場合に限って上限を設けるなら、軽過失に限ることを条文で明らかにしておきます(同条3項)。
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本ページは一般的な情報提供です。許可・届出の運用や解釈は、所管の行政機関によって示されるものです。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた人材紹介契約書、求人掲載契約書、採用支援・採用代行の業務委託契約書、キャリアアドバイザー・営業代行との業務委託契約書、求人サイト・スカウトサービス・採用支援SaaSの利用規約とプライバシーポリシーなどを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。このガイドは契約書・利用規約・プライバシーポリシーを扱い、許可申請・届出の手続は扱いません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)