このページの要点
- 有料職業紹介事業者は自己の名義で他人に有料の職業紹介事業を行わせてはならない(職業安定法32条の10)。
- 業務を「キャリア相談・書類添削・面接対策など職業紹介に該当しない求職活動支援」と定義し、推薦・交渉を行わないと明記する。
- 報酬が紹介手数料に完全連動すると、紹介の主体が問われやすい。対応件数に応じた報酬との組合せも検討する。
- 定額・倍数の高額な違約金や研修費は、実損害・合理的な実費に置き換える。稼働時間は件数・期限・成果で定める。
紹介そのものは自社で、業務委託の人には「職業紹介に当たらない支援」を
紹介会社が個人のキャリアアドバイザー(求職者の相談に乗り、転職活動を支援する担当者。以下「CA」)や紹介パートナーと業務委託で組むご相談は、事務所に特に多く寄せられるテーマです。結論から言うと、求人企業への推薦・採否の取次ぎ・条件の交渉といった雇用関係の成立のあっせんは紹介会社自身が行い、業務委託のCAにはその周辺の支援(キャリア相談、応募書類の添削、面接対策など)を担ってもらう、という切り分けが基本です。
その理由は、次の二つの規定にあります。
- 名義貸しの禁止:有料職業紹介事業者は、自己の名義をもって、他人に有料の職業紹介事業を行わせてはなりません(職業安定法32条の10。違反は64条3号)。
- 職業紹介責任者:有料職業紹介事業者は、事業所ごとに、その事業所に専属の職業紹介責任者を、自己の雇用する労働者の中から(又は事業主・役員を)選任しなければなりません(32条の14、施行規則24条の6第1項1号)。
業務委託の個人が、自分の判断で求人と求職をマッチングし、雇用の成立をあっせんしていると、その個人が無許可で職業紹介をしている、又は紹介会社が名義を貸している、と評価されるおそれがあります。契約書の業務範囲の書き方は、この評価を左右する一番の材料です。
業務範囲を「職業紹介に該当しない求職活動支援」に切り出す
設計の要点 業務委託のキャリアアドバイザーの業務範囲
| 論点 | 設計 | 理由 |
|---|---|---|
| 業務の内容 | 「求職者対応業務(キャリアカウンセリング、応募書類の添削、面接対策、求人に関する情報の提供、応募意思の確認、進捗フォロー等、職業紹介に該当しない求職活動支援業務)」と定義する。業務を簡潔に書く場合も「ただし、職業紹介に該当しない範囲とする」の一文は残す。 | 雇用関係の成立のあっせんは紹介会社自身(雇用する職業紹介の従事者・職業紹介責任者)が行い、CAはその周辺の支援に限る、という切り分けを業務の定義で表すためです。 |
同じ問題は、営業代行との契約でも起きます。専門職の求人マッチングを運営する会社と営業代行の契約では、「マッチング後のフォロー」として、面接日時の調整や必要書類の準備など、採用に至るプロセスに営業代行がどこまで関わるかが論点になりました。
設計の要点 営業代行の「マッチング後のフォロー」
| 論点 | 設計 | 理由 |
|---|---|---|
| 面接の調整・書類の準備 | 面接日時の調整や必要書類の準備は、原則として、登録者と施設の情報を速やかに運営会社の営業担当者に報告することで対応する。連絡が難しくなった場合その他運営会社から別途の指示があった場合に限り、手数料の範囲内の軽微なサポートを行う。 | 採用に向けた調整は許可を持つ運営会社が自ら行い、営業代行は情報を引き継ぐだけ、という役割分担にするためです。 |
条文例業務委託契約書 第◯条(業務の範囲)
- 甲が乙に委託する業務(以下「本業務」といいます。)は、甲が受け付けた求職者に対する次の支援業務とし、職業紹介に該当しない範囲に限ります。(1)キャリアに関する相談 (2)応募書類の作成の助言及び添削 (3)面接の練習及び助言 (4)甲が保有する求人に関する情報の提供及び応募の意思の確認 (5)応募後の進捗の確認
- 乙は、求職者を求人者に推薦し、求人者との間で採否の連絡又は労働条件の交渉を行い、その他求人者と求職者との間の雇用関係の成立をあっせんする行為を行ってはなりません。これらの行為は、甲が自ら行います。
- 乙は、求人者又は求職者から前項の行為に関する依頼又は相談を受けたときは、自ら回答せず、速やかに甲に報告し、甲の指示に従います。
甲=紹介会社、乙=業務委託のCA。第4号の「情報の提供」は、甲の求人を伝える範囲にとどめ、乙が個別の求人者と求職者を結びつける判断をしない運用とセットで機能します。
報酬の決め方:紹介手数料への完全連動に注意する
設計の要点 CAの報酬
| 論点 | 設計 | 理由 |
|---|---|---|
| 報酬の発生条件 | 「求職者の就業に寄与し、かつ甲が当該業務により収益を得た場合、その収益の一定割合」とし、報酬の条に「紹介」の文言を使わない。 | 業務の範囲から職業紹介を外したことと、報酬の書き方をそろえるためです。 |
ただし、業務の範囲を職業紹介から外しても、報酬が紹介手数料に完全に連動していると、実態として紹介の主体はどちらかが問われやすくなると考えられます。別会社名義のキャリア支援の業務委託契約では、報酬を「対応した利用者1名につき定額」(初回の対応その他の指定業務の実施が条件で、成約とは連動しない)としており、比較の参考になります。対応件数や支援の内容に応じた報酬と、成約に応じた報酬を組み合わせる方法もあります。
報酬の発生時点と支払期日、紹介手数料を求人者に返金した場合の委託料の返還は、紹介手数料の設計と返金規定で扱っています。返還の事由を「委託者が求人者に紹介手数料の返還義務を負う場合」と書いて求人者との契約の返金期間に連動させるのが、事務所の設計の方向です。
求職者を集めてくれる営業代行や代理店に成果報酬を払う設計にも注意が必要です。専門職の求人マッチングの営業代行は、求職者へのサービスの案内と登録の促進、施設への営業と求人掲載の支援を行い、登録者が施設と雇用契約などを結んで勤務を始めたことを「成果」として、派遣売上又は紹介料の一定割合を報酬とする設計でした。営業代行が求職者の勧誘と施設への推薦まで担い、紹介料の割合で報酬を受けると、営業代行が職業紹介の一部を担っている、あるいは報酬を得て労働者の募集に従事している(委託募集。36条)と評価される余地があります。営業代行の業務を「サービスの案内と登録の促進」「施設への媒体の営業」にとどめ、個別のマッチングに関与しない書き方が安全側です。
求人系のサービスをSNSで宣伝するインフルエンサーとの契約では、ライブ配信1枠ごとの定額と、公式の連絡窓口に新規の問合せが届いた件数に応じた定額の二本立ての報酬としていました。宣伝の対象が求人企業自身の募集なのか、求人サービス(プラットフォーム)なのかで、成果に連動する報酬の扱いの検討の筋道が変わります。サービスの広告であることが分かる表示にする必要もあります。
名義を使った無許可行為の禁止と、「最終決定をしない」業務の列挙
キャリア支援の業務委託契約には、「有料職業紹介事業、労働者供給事業その他法令上許認可、届出又は登録を要する業務に該当する行為を、自ら又は甲の名義を用いて行ってはならない」「転職成功、年収増加、内定取得その他一定の結果を保証する表示又は説明を行ってはならない」を置きました。法令遵守の条では、職業安定法・個人情報保護法・景品表示法などの遵守に加え、「監督官庁その他公的機関から本業務に関連する照会・調査・指導を受けた場合は直ちに委託者に通知する」としています。
業務委託の人員を求職者や取引先の「窓口」にする場合は、最終判断と契約締結の権限を会社に残すことを列挙しておくと、あっせんや代理の問題と、責任の所在の両方を整理できます。配信者の事務所の運営スタッフとの契約では、スタッフが行ってはならない業務として「契約内容・報酬条件の最終決定又は最終説明」「第三者との契約締結」「クレーム・重大トラブルの最終対応」「契約解除その他重要な判断」「報酬・評価・人事の最終決定」「振込・経理その他会社資金の取扱い」を列挙していました。採用関連業務の再委託契約でも、必要な許可・届出なく職業紹介を自己の名義で行わない、採用の最終決定を行わない、委託者やクライアントを代理して採用・内定などの法的拘束を生じさせる行為をしない、と定めています。
違約金・研修費・業務の放棄の整理
CAの業務委託契約では、依頼者との協議を踏まえて、違約金の条を次のように整理しました。
設計の要点 CA契約の違約金
| 場面 | 設計 |
|---|---|
| 再委託の禁止の違反 | 委託者が合理的に算出した実損害の範囲で賠償 |
| 競業避止(終了後2年)の違反 | 解除・利益相当額の返還請求・実損害の賠償・差止め |
| 秘密保持の違反 | 実損害の範囲で賠償 |
| 研修を受けた後の早期の解除 | 研修に要した合理的な費用相当額の返還を求めることができる |
| 業務の放棄・7日以上の連絡不能 | 損害を合理的に算出した範囲で賠償。報酬は原則として発生しないが、明確な成果があれば協議 |
個人の受託者に対する高額・定額の違約金は、公序良俗(民法90条)で争われやすいほか、受託者が労働者と評価された場合には、労働基準法16条(使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない)の問題になります。事務所が扱ってきた案件でも、研修費の返還は労働基準法16条との関係で検討すべき典型的な論点です。違約金を定額・倍数ではなく、実損害や合理的な実費を基準に組み立てたのは、この検討を踏まえたものです。
稼働時間・連絡可能時間と、労働者性
CAの業務委託契約では、依頼者の運用上の要望として、曜日と時間帯を指定して週あたりの最低業務時間を確保させる条項や、業務終了後のマネージャーとの連携を必須とする条項が検討されたことがあります。最終的に簡潔にまとめた契約書では、こうした稼働時間・定例連携の条項は置いていません。時間の拘束や業務遂行上の指揮監督は、労働者に当たるかどうかの判断要素になるので、業務委託で組むなら、時間の指定ではなく、対応件数・期限・成果で業務を定めるのが基本です。
連絡が取れる時間帯を決めたい場合の表現例として、配信者の事務所のスタッフとの契約では、スタッフは事務所の通常の対応時間に連絡が取れるよう努める、ただし本項はスタッフの労働時間を拘束し又は指揮命令を目的とするものではない、イベント・撮影・研修への参加は任意、と書きました。報酬は成果報酬のみで固定報酬はなく、通信費・機器は受託者の負担です。「努める」という努力義務にとどめ、拘束でない旨を注記することで、時間的拘束と受け取られにくくしています。なお、受託者が従業員を使用しない個人などの特定受託事業者に当たる場合は、業務委託をしたら直ちに給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面又は電磁的方法で明示すること(フリーランス法3条1項)、委託者が特定業務委託事業者なら支払期日の規律(同法4条)、継続的な業務委託の解除の予告(同法16条1項)などもかかります。CAとの契約書は、こうした取引条件の明示の書面を兼ねる形で作っておくと、運用の手間が減ります。労務管理の設計や雇用への切替えの手続はこのガイドの対象外で、ここで扱うのは、契約書の文言が判断の要素とどう関係するかまでです。
秘密保持・求職者情報・競業と引き抜き
CAが独立する際に最も持ち出されやすいのは求職者の情報です。業務委託のCAと別に結ぶ秘密保持契約では、秘密情報の類型に「顧客・求職者情報(委託者が保有する顧客・求職者・取引先の情報、契約状況、取引履歴、クレーム履歴、要望・意見等)」を明記し、委託者のクライアント・取引先・求職者・提携先に対する競業行為とその勧誘・あっせんを禁止しました。業務委託契約の本体の秘密保持の条とは「抵触する場合は秘密保持契約が優先する」と優先関係を決めています。二本立てにするなら、この一文が欠かせません。
秘密保持契約の版を重ねる過程では、秘密情報の定義が業務委託契約の本体と少しずつずれていくことがあります。本体では「業務に関して知り得た情報」、秘密保持契約では「委託者が秘密である旨を示した情報」と定義が違えば、口頭で伝えた求職者の事情がどちらに入るかで結論が変わります。優先関係の一文に加えて、両方の定義を同じ言葉で書き、求職者情報は表示の有無にかかわらず秘密情報に含める、と明記しておくと、独立の際の持出しに対する請求の根拠が揺らぎません。
同じ業務委託契約では、在籍するメンバーと結託・共謀して同業種で独立・競業することも禁止し、名義の変更・別法人の設立・第三者を介した関与による潜脱も競業行為に当たると明記しました。違反の効果は、「解除・利益相当額の返還請求・実損害の賠償・差止め」としています。別会社名義のキャリア支援の契約では、競業避止(終了後1年)に「一般的な職業活動又は公知の情報の利用までを制限するものではない」という限定を付け、損害賠償の上限(過去6か月の報酬総額)は故意・重過失・秘密保持違反・個人情報保護違反・反社条項違反には適用しない、としました。
配信者の事務所のスタッフとの契約では、引き抜きの違約金を「違反があった月に支払われるべき報酬額の一定割合」とし、「損害賠償額の予定ではなく、実損害が超える場合は別途請求できる」と書いていました。違約金を受託者の報酬月額に連動させると、収入の規模に見合った額になり、定額の高額な違約金より合理性を説明しやすくなります。求職者の個人情報の持出しや私的な取引を防ぐ条項は、求職者の個人情報とプライバシーポリシーにまとめています。
求人媒体の販売代理店との契約では、指定地域での営業・新規開拓に加え、顧客との利用契約の締結、代金の請求・回収・入金の確認、日程の調整、掲載内容の一次的な問合せ対応まで任せ、代理店は月末締めで売上から自分の報酬分を差し引いた残額を翌月10日までに運営者に送金する(遅延には遅延損害金、一定の営業日を超える遅延で解除できる)、としていました。代理店が媒体の販売と代金の回収だけを担う限り、職業安定法の規制の外にあります。代理店が求職者の集客や個別のマッチングに関与し始めると、この章で見てきた論点に入ってきます。代理店の競業避止と独占販売権の関係は、直接採用・中抜き対策で扱っています。
ご質問と回答 紹介会社からのご質問
業務委託のCAが、紹介会社の名刺を持って求人企業を訪問したいと言っています。
求人企業との接点を持たせること自体で直ちに問題になるわけではありませんが、訪問先で推薦や条件の交渉を行えば、契約で除外した業務に入ります。訪問の目的を求人情報の収集などに限り、推薦・交渉は自社の従業者が行うことを、契約と社内の手順の両方で決めておきます。
CAが辞めた後に、担当していた求職者を連れて競合に移るのを防げますか。
秘密保持契約で求職者情報を秘密情報として明記し、求職者への勧誘・あっせんの禁止に期間を付けて定めます。競業避止は期間・範囲を限定し、一般的な職業活動まで制限しない旨を書いておくと、合理性を説明しやすくなります。
ヒヤリングで確かめること CA・紹介パートナーとの契約を作る前の問い
業務委託の方は、求人企業と直接やり取りしますか。推薦や条件の交渉をしますか。
するなら、その部分を自社の従業者に戻す業務設計から考えます。
報酬は、紹介手数料の何%ですか。対応件数に応じた報酬はありますか。
完全連動なら、紹介の主体が問われにくい組合せを検討します。
稼働時間・定例の会議・ノルマを決めたいですか。
時間の拘束ではなく、件数・期限・成果で定める形に置き換えます。
研修を行いますか。費用はいくらかかっていますか。
返還を求めるなら、合理的な実費の範囲で定めます。
業務委託の方は、自分のSNSで求職者を集めていますか。
紹介会社の名前を使った独自の紹介(名義貸し・無許可)を防ぐ条を置きます。
CA・紹介パートナーとの契約で起きがちなこと
よくあるご質問
業務委託のキャリアアドバイザーに、求人企業への紹介まで任せてもよいですか?
許可を受けた紹介会社が自己の名義で他人に有料の職業紹介事業を行わせることは、名義貸しとして禁止されています(職業安定法32条の10)。業務委託の方には、キャリア相談・書類添削・面接対策など職業紹介に当たらない支援を担ってもらい、紹介そのものは自社で行う切り分けが基本です。
業務委託のアドバイザーの報酬を、紹介手数料の◯%にしてもよいですか?
禁止されてはいませんが、紹介手数料に完全に連動すると、実態として紹介の主体が誰かを問われやすくなります。対応件数や支援業務の内容に応じた報酬と組み合わせる方法もあります。
研修を受けてすぐ辞めた場合、研修費を返してもらえますか?
実際にかかった合理的な費用の範囲で返還を求める定めは可能ですが、一律の定額は争われやすく、相手が労働者と評価された場合には労働基準法16条(賠償予定の禁止)の問題になります。
求職者を集めてくれる営業代行に、成約報酬を払ってもよいですか?
営業代行が求職者の勧誘や個別の推薦まで行うと、職業紹介や委託募集の規制に触れるおそれがあります。営業代行の業務はサービスの案内と登録の促進までにとどめ、契約書でもそう定めておきます。
業務委託の契約書で、稼働時間を決めてもよいですか?
時間や場所の拘束は、労働者と評価される要素になります。業務委託で組む場合は、対応件数・期限・成果で業務を定めるのが基本です。連絡が取れる時間帯を決めたいなら、努力義務にとどめ、拘束を目的としない旨を書く方法があります。
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本ページは一般的な情報提供です。許可・届出の運用や解釈は、所管の行政機関によって示されるものです。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた人材紹介契約書、求人掲載契約書、採用支援・採用代行の業務委託契約書、キャリアアドバイザー・営業代行との業務委託契約書、求人サイト・スカウトサービス・採用支援SaaSの利用規約とプライバシーポリシーなどを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。このガイドは契約書・利用規約・プライバシーポリシーを扱い、許可申請・届出の手続は扱いません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)