外国人材の人材紹介契約書

外国人材の紹介契約は、人材紹介の一般的な論点に加えて、在留資格に関わる固有の論点を持っています。

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外国人材の紹介では、「在留資格が下りなかった」ことが典型的な不成立の事由です。内定取消の条の免除事由に書いていないと、手数料をめぐって争いになります。

このページの要点

  • 従事させる業務を在留資格の範囲に限定し、求人者にも在留カード等による確認の義務を契約で置く(在留資格外の就労であることを知らなかったことに過失があれば、不法就労助長罪の処罰を免れない。入管法73条の2第2項)。
  • 在留資格の不許可を内定取消の免除事由に、法令の改廃・行政処分を不可抗力に含め、長期化した場合の解除を定める。
  • 渡航費などの実費は求人者が支払先に直接支払う構造にし、紹介会社が受け取る場合は手数料規制との関係を確認する。
  • 在留手続の申請書類は受入れ機関自身か行政書士が作成し、紹介会社は書類の収集・連絡の調整の支援にとどめる。

外国人材の紹介契約で、一般の紹介契約に加えて決めること

外国人材の紹介契約書は、人材紹介の一般的な論点(人材紹介基本契約書、返金規定、直接採用・中抜き対策)に加えて、在留資格に関わる固有の論点を持っています。このページの素材は、事務所が作成した、外国人材(在留資格「特定技能」)の有料職業紹介会社と求人法人の紹介契約書です。依頼者との協議を踏まえて整えた条文の工夫を紹介します。

外国人材の紹介契約に固有の論点

在留資格と業務

  • 紹介人材が従事できる業務は在留資格で決まる
  • 業務の範囲を在留資格の範囲に限定する
  • 求人者にも確認の義務を置く

手続と時間

  • 在留資格の不許可・審査の遅れ
  • 内定取消の免除事由と不可抗力
  • 入社までの目安の期間

費用と役割

  • 渡航費・住居準備費などの実費の負担
  • 手数料に含まれる業務の範囲
  • 在留手続の書類の作成を誰が行うか

在留資格と業務範囲、双方の確認義務

外国人が従事できる活動は在留資格で決まります。出入国管理及び難民認定法(入管法)19条1項は、別表第一の在留資格(特定技能を含みます)をもって在留する者が、資格外活動の許可を受けずに、在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動を行うことを制限しています。紹介契約では、紹介人材を従事させる業務を、在留資格で認められる範囲に限定しておく必要があります。

紹介契約では、紹介の対象となる人材を「特定技能の在留資格を有するか、取得を予定する者」とし、求人者も在留資格の適法性について必要な確認を行う、在留資格の変更・取消その他の異常が生じたら速やかに協議する、と双方に確認の義務を置きました。対象業務は、在留資格で認められる業務を具体的に列挙したうえで、「在留資格に基づき、法令その他関係行政機関の指導に適合する範囲に限定」し、これを超える業務に従事させないよう求人者が留意する、としています。

求人者の側に確認の義務を明記するのは、求人者自身のリスクの管理でもあります。事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者、業として外国人に不法就労活動をさせる行為に関しあっせんした者などは、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処され、又は併科されます(入管法73条の2第1項)。しかも、その外国人の活動が在留資格に応じた活動に属しない報酬を受ける活動であることなどを知らなかったことを理由として、処罰を免れることはできません(過失がない場合を除きます。同条2項)。紹介会社にとっても、同条1項の罪で罰金の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者は、有料職業紹介事業の許可を受けられない(職業安定法32条1号)という重い結果につながります。

条文例外国人材紹介契約書 第◯条(在留資格及び従事させる業務)

  1. 甲は、特定技能の在留資格を有し、又はその取得を予定する者を、乙に紹介します。
  2. 乙は、紹介人材を雇用するに当たり、在留カードその他の書類により、紹介人材の在留資格及び在留期間を自ら確認します。
  3. 乙は、紹介人材を、その在留資格に応じた活動の範囲に属する業務であって、本契約別紙に定める業務にのみ従事させるものとし、これを超える業務に従事させてはなりません。
  4. 甲及び乙は、紹介人材の在留資格の変更、在留期間の満了、在留資格の取消しその他在留に関する異常が生じ、又はそのおそれがあることを知ったときは、直ちに相手方に通知し、対応を協議します。

甲=紹介会社、乙=求人者。別紙の業務は、分野ごとの運用の基準を確認して定めます。

あわせて、就労地域を「原則として一定の地域内の求人者が指定する事業所」とし、変更がある場合は事前に書面で協議する、紹介人材の選定では条件に加えて求人者の業務内容・就労環境に適合するかを紹介会社が判断して推薦する、としました。外国人材は、生活の立ち上げ(住居・通勤)が就労地域と強く結びつくので、勤務先の変更の可能性を契約の段階で協議事項にしておくことに実務上の意味があります。

在留資格の不許可・手続の遅れと、内定取消・不可抗力

外国人材の紹介では、内定から入社までに在留資格の手続が入り、数か月かかることもあります。紹介契約では、求人の受付から入社まで在留手続を含め概ね数か月の目安を示し、審査の状況などで前後することを求人者が了承する、としました。そのうえで、在留資格が下りなかった場合に備えて、内定取消の条と不可抗力の条の二つで手当てしています。

外国人材の紹介の流れと、契約で手当てする場面

  1. 求職者の募集現地・国内のネットワークで募集。求人者は業務内容・職場環境などの情報を誠実に提供する
  2. 人選・面接求人者の条件に基づく人選。面接では通訳の支援を含めて調整する
  3. 内定内定時の手数料が発生。在留資格の不許可は内定取消の免除事由
  4. 在留手続受入れ機関又は委託を受けた専門家が申請。紹介会社は書類の収集・連絡の調整を支援
  5. 入国・入社入社時の手数料が発生。早期退職は返金規定、実費は原則返金なし

入社までの期間が長いほど、途中で条件が変わる可能性が高くなります。各段階で誰が何を通知するかを決めておきます。

在留手続の期間中は、紹介会社も求人者も、候補者の状況を直接には把握しにくくなります。審査の状況、追加の書類の要請、入国の予定日の変更などを、誰が誰にいつまでに知らせるかを決めておかないと、求人者が受入れの準備(住居の手配など)を進めた後で入社が大幅に遅れる、という事態が起きます。紹介契約で求人者に情報提供の義務を置いたのと同じように、紹介会社の側にも、候補者から得た手続の状況を求人者に共有する義務を置いておくと、双方の準備の足並みがそろいます。

設計の要点 内定取消の免除事由と不可抗力

論点設計理由
内定取消の免除事由天災地変・疫病・行政指導に加えて、「在留資格に関する不許可その他乙の責に帰することのできない不可抗力又は行政上・制度上の理由」を例示し、内定時の手数料の支払義務の全部又は一部を免除できるとする。外国人材では、在留資格が下りないことが典型的な不成立の事由です。例示に明記することが実務上の要です。
契約全体の不可抗力不可抗力の定義に「法令の制定・改廃、行政処分、疫病の流行」を含め、不可抗力で履行が困難になった当事者は事由の概要・影響の範囲・予想される期間を書面(電子メールを含む)で通知し、一時的なら履行の猶予・延長を協議し、60日以上続けば相手方が書面で契約の全部又は一部を解除できる、解除で相手方は損害賠償責任を負わない、とする。入国の制限や査証の発給の停止で、内定から入社までが長期化した場合の出口を決めておくためです。

条文例外国人材紹介契約書 第◯条(不可抗力)

  1. 本契約において「不可抗力」とは、自然災害、戦争、暴動、疫病の流行、法令の制定又は改廃、行政処分その他当事者の責めに帰することができない事由をいい、入国の制限、査証の発給の停止及び在留資格に関する不許可を含みます。
  2. 不可抗力により本契約の履行が困難となった当事者は、その事由の概要、影響の範囲及び予想される期間を、書面(電子メールを含みます。)により速やかに相手方に通知します。
  3. 前項の事由が一時的なものであるときは、甲及び乙は、履行の猶予又は期限の延長について協議します。
  4. 不可抗力による履行の困難が60日以上継続したときは、相手方は、書面により本契約の全部又は一部を解除することができます。この解除により、いずれの当事者も損害賠償の責任を負いません。

甲=紹介会社、乙=求人者。在留資格の不許可を例示に入れるかどうかは、内定取消の条の免除事由とそろえます。

内定取消の免除事由(個々の候補者の問題)と、契約全体の不可抗力による解除(取引全体の問題)を組み合わせておくと、一人の候補者の在留資格が下りなかった場合と、制度の変更で紹介そのものが止まった場合を、それぞれ別の条で処理できます。内定取消の通知の期限や、内定時の手数料を返還しないことの定めは、人材紹介基本契約書のページで紹介した設計と同じです。

手数料に含まれる業務と、実費の負担

外国人材の紹介では、紹介会社が通訳・渡航・生活の立ち上げの支援まで行うことが多く、手数料で何をカバーし、何が別の費用かが争いになりやすい部分です。紹介契約では、紹介手数料に含まれる業務として「求職者との現地での連絡調整」「通訳又は翻訳の支援(面接時を含む)」「書類準備の支援及び渡航手続の支援(法的助言を除く)」を列挙しました。

紹介手数料とは別に求人者が負担する実費としては、渡航費(航空券・空港送迎)、住居準備費(賃貸の初期費用・家具家電)、健康診断費、在留手続を専門家に委託した場合の委託料を項目ごとに挙げ、渡航費には目安の金額の幅を記載し、紹介会社は必要に応じて概算額・領収書・請求書の提供又は補助を行う、としました。目安の額を書いておくと、求人者にとって総費用の見通しが立ち、後の費用のトラブルを防げます。

設計の要点 実費の返金の扱い

論点設計理由
早期退職と実費「紹介人材の退職が紹介会社の故意又は重過失によって引き起こされた場合を除き、求人者は費用の返金を請求できない」という一つの定めにまとめる。返金規定の対象が「手数料」だけで「実費」には及ばないことを、返金規定とは別の条で明確にするためです。

実費の扱いでは、手数料規制との関係にも注意が必要です。有料職業紹介事業者は、職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を、手数料表などに基づく場合を除いて受けてはなりません(職業安定法32条の3第1項)。費用を求人者が第三者(航空会社、不動産会社、医療機関、手続を委託した専門家)に直接支払う構造なら紹介手数料とは別のものとして説明しやすく、紹介会社が受け取って支払う構造なら手数料規制との関係を確認する必要が出てきます。紹介契約で、紹介会社の役割を「概算・領収書の提供又は補助」にとどめたのは、紹介会社が実費を受け取らない構造にするためです(紹介手数料の設計)。

外国人材の紹介で発生する費用の整理(紹介契約の設計)

費用負担者支払の流れ返金の扱い
紹介手数料(内定時・入社時)求人者求人者→紹介会社入社時の部分のみ返金規定の対象
渡航費(航空券・空港送迎)求人者求人者→航空会社等(紹介会社は概算・手配の補助)紹介会社の故意・重過失による退職を除き返金なし
住居準備費(初期費用・家具家電)求人者求人者→不動産会社・販売店同上
健康診断費求人者求人者→医療機関同上
在留手続の委託料求人者求人者→手続を委託した専門家同上

外国人の求職者本人から手数料を受け取ることは、職業安定法32条の3第2項により原則としてできません。保証金など名目を変えても、同じ問題が生じ得ます。

在留手続の役割分担と、申請書類の作成

紹介契約では、紹介の流れを「求職者の募集→候補者の人選→面接の調整(通訳の支援を含む)→内定後の手続」と定め、内定後は紹介会社が在留資格認定証明書の交付申請に関する「支援」を行い、必要に応じて求人者に行政書士などの専門家を紹介する、と書きました。手数料に含まれる業務を「書類準備の支援および渡航手続の支援(法的助言を除く)」としたのも、同じ線引きです。

この線引きの理由は行政書士法にあります。官公署に提出する書類などの作成(行政書士法1条の3)は、行政書士又は行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として行うことはできません(同法19条1項)。紹介会社が「ビザ申請込み」として申請書類を作成し、その対価を紹介手数料に含める設計は、この規定との関係で問題になり得ます。申請書の作成そのものは受入れ機関自身か行政書士が行う前提で、紹介会社の支援は情報の収集と連絡の調整にとどめる、というのが契約書の書き方です。「法的助言を除く」という一言は、在留資格の申請に関する判断や書類の作成を紹介会社が担わない、という線引きを表しています。

条文例外国人材紹介契約書 第◯条(在留手続に関する役割)

  1. 在留資格認定証明書の交付申請その他紹介人材の在留に関する手続は、乙が受入れ機関として自らの責任で行い、又は乙が行政書士その他の法令上手続の代理等を行うことができる者に委託して行います。
  2. 甲は、前項の手続に必要な紹介人材の書類の収集、紹介人材との連絡の調整及び翻訳の補助を行います。甲は、前項の手続に係る書類を作成せず、在留資格の該当性その他の法的な判断に関する助言を行いません。
  3. 前項の甲の業務は紹介手数料に含まれ、第1項の委託に要する費用は乙が負担します。

甲=紹介会社、乙=求人者。紹介会社が行う支援と、行わない業務を分けて書いた例です。

国籍の書き方と、目的条項での法令遵守

外国人材の紹介契約では、対象となる人材の条件として「主として特定の国籍を有する者」と書き、国籍を求人者の採用基準に結びつける書き方を見かけることがあります。何人も、国籍などを理由として、職業紹介・職業指導などについて差別的な取扱いを受けることはないとされています(職業安定法3条)。国籍を紹介の条件や採否の基準として書くことは避けます。紹介会社の取引のネットワーク(どの国の送出しの機関と提携しているか)は事実の記載にとどめ、語学力などの要件を置くときは、業務の遂行に必要な範囲で、国籍と切り離して定めます。

目的の条では、本契約は有効な在留資格を有する外国人材を求人者の業務に従事させる目的で紹介し、求人者が受け入れて紹介手数料その他の義務を履行することにより、役割・責任・権利義務を明確にするものであり、「外国人材の適正かつ円滑な雇用を推進することを基盤とし、その過程における相互の協力義務及び法令遵守義務を定める」としました。準拠法の条でも、準拠する法令として民法・商法・職業安定法・個人情報保護法を例示しています。外国人材の紹介では、紹介会社だけでなく受入れの側にも在留資格・労働関係の法令の遵守が求められることを、目的の段階で双方の義務として示しておく書き方です。

ご質問と回答 外国人材の紹介をめぐるご質問

在留資格の審査が長引き、入社が半年以上遅れそうです。紹介契約はどうなりますか。

紹介契約に不可抗力の条があり、行政処分や制度上の理由による履行の困難を不可抗力に含めていれば、まず履行の猶予・延長を協議し、一定期間(紹介契約の例では60日)以上続けば解除できる、という定めに従います。候補者ごとの内定の扱いは、内定取消の条の免除事由で処理します。

求人企業が、紹介会社から紹介された外国人材を、在留資格の範囲外の業務にも就かせたいと言っています。

在留資格に応じた活動に属しない業務に就かせることはできません。紹介契約で業務を在留資格の範囲に限定し、求人者が超える業務に従事させないよう留意する義務を置いているのは、このためです。業務の変更が必要なら、在留資格の手続の要否を先に確認します。

ヒヤリングで確かめること 外国人材の紹介契約を作る前の問い

  1. 紹介する人材の在留資格は何ですか。従事させる業務は何ですか。

    業務の範囲を在留資格の範囲に限定して別紙に書きます。

  2. 在留手続は、誰が行いますか。紹介会社は何を支援しますか。

    申請書類の作成を紹介会社が行わない線引きを契約に書きます。

  3. 渡航費・住居費などの実費は、誰が誰に払いますか。

    紹介会社が受け取る構造かどうかで、手数料規制との関係が変わります。

  4. 在留資格が下りなかったとき、内定時の手数料はどうしますか。

    免除事由に明記し、不可抗力の解除とも組み合わせます。

  5. 対象の人材を、特定の国籍に限っていますか。

    国籍を紹介の条件や採否の基準にしない設計にし、提携先の国は事実の記載に、言語は業務上必要な要件としてだけ定めます。

外国人材の紹介契約で起きがちなこと

よくあるご質問

外国人材の紹介契約で、普通の人材紹介契約と違う点は何ですか?

在留資格で決まる業務の範囲、在留資格が下りなかった場合の扱い、渡航費・住居費などの実費の負担、在留手続の役割分担を定める点です。

紹介会社が在留資格の申請書類を作って、紹介手数料に含めてもよいですか?

他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、官公署に提出する書類を業として作成することは、行政書士又は行政書士法人でなければできません(行政書士法19条1項)。紹介会社は書類の収集や連絡の調整の支援にとどめ、申請書の作成は受入れ機関自身か行政書士が行う形にします。

在留資格が許可されなかった場合、紹介手数料はどうなりますか?

契約で決めておく必要があります。求人企業の責任ではない不許可の場合は、内定時の手数料を免除又は減額する定めを置くのが一般的です。

渡航費や住居の初期費用を紹介会社が立て替えて、求人企業に請求してもよいですか?

紹介会社が職業紹介に関して受け取る金員は、名目にかかわらず手数料の規制を受けます(職業安定法32条の3第1項)。費用を求人企業が支払先に直接支払う形にするか、手数料表との関係を確認してください。

外国人材を受け入れる求人企業にも、確認の義務はありますか?

在留資格の範囲外の就労をさせた場合、在留資格を確認しなかったことに過失があれば、知らなかったことを理由に処罰を免れません(入管法73条の2第2項)。契約にも求人企業による在留カードの確認の義務を置いておきます。

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